本年度の調査は、聖マリアンナ医科大学、東京大学総合研究博物館、国立科学博物館、愛知県田原町博物館および同渥美町郷土資料館において、所蔵の縄文時代人骨を対象に行った。調査項目として、従来のう歯率および蝕の発生部位に加えて、歯槽骨の退縮、歯石、エナメル質減形成、膿瘍、抜歯を加えた。研究期間が実質的に半年しかないため、詳しい分析結果は未だ出せていないが、研究の経過を以下に報告する。 7月に愛知県田原町博物館および同渥美町資料館において行った調査では、伊川津人骨、保美人骨、吉胡人骨およそ50体から新たなデータを採取することができた。これにより、以前東京大学および国立科学博物館所蔵の伊川津人骨および保美人骨と併せて、愛知県渥美半島出土の縄文時代人骨(主として後期・晩期)の歯科疾患をかなり詳細に知ることができた。特に抜歯については、下顎の犬歯を抜歯対象とすることが、同地方に限られた風習である可能性が示唆された。 また12月には東京大学総合研究博物館において、2月には国立科学博物館において調査を行った。これは以前データを採取した個体であるが、新たに調査項目を加えたために再調査したものである。 取得した縄文時代人の歯科疾患のデータは、現在コンピューターへ入力しつつあり、調査項目間の相関関係をはじめとし、いくつかの統計的な解析を行うための準備をすすめつつある。
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