本研究費補助金によって明らかにすべきことは、ニホンザルの餌付け群の樹上ポジショナル・ビヘイビア型の中で年齢によって頻度差があるものは何でどの程度か、また何故その差が存在するのかを考察することであった。また別に和歌山県白浜町椿野猿公苑においてニホンザルの個体識別を進めることも目的であった。 等距離を移動するときにどのくらいの距離をどのロコモーション型で行うか(これを移動依存度と仮に呼ぶ)を年齢別に分析した。年齢によって移動依存度が異なるポジショナル・ビヘイビアの型は大きく分けてぶら下がり型としがみつき型、複合型であった。これらは年齢とともに移動依存度が減少していった。つまり、これは四肢に圧力だけではなく張力がかかっていることが若い個体ほど多いということを示している。また同時に浮遊型・常接型では浮遊型の移動依存度が、また移動角度が急である移動依存度が、それぞれ年齢とともに減少していく傾向が認められた。これらの結果は既にHamada(1983)や石田(1972)によって報告されている四肢の筋重量比が指屈筋群に偏っていることと関係していると思われる。 静止状態のポスチュアではそれほど使用頻度における年齢差は認められなかった。どの年齢の個体も座位と臥位が圧倒的に多く、立位やぶら下がり、しがみつきはあまり観察されなかった。ただし静止状態では若い個体ほど長時間臥位姿勢をとる傾向が認められた。このことは形態的要請というよりも幼若な個体が母親などから多くグル-ミングされるなどの社会的状況と結び合わせて考えた方が妥当かもしれない。
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