液晶セル中の電界分布(不均一電界)によって生じる特殊な分子配向欠陥の挙動を明らかとし、その抑制方法について検討することを目的として主に次に述べる三つの項目について実験及び考察を行った。 まずはじめに、本研究費によって導入したCCDカメラ等を用いて画像計測及び処理システムを構成し、スリット状電極構造によって発生する分子配向欠陥の挙動を詳しく観察した。その結果、規則的に折れ曲がる特殊な形状の分子配向欠陥が生じることが明らかとなった。また、液晶セルの駆動法によって分子配向欠陥が抑制され、欠陥の無い分子配向状態が得られることが明らかとなった。さらに、この状態において大きな電圧を印可すると、新たに別の分子配向欠陥が発生してさらに異なる分子配向状態へ遷移する現象が観察され、少なくとも3つの安定状態が存在する等の興味深い現象が明らかにされた。 次に、UVキュアラブル液晶材料を用いて分子配向状態を固定することにより、液晶セル断面における分子配向状態の観察を行った。これまでにシミュレーション等から予想されてきた分子配向状態が実際に確認されたが、分子配向欠陥の微細構造を明らかにするまでには至らず、今後さらに分解能の高い測定法方を検討する必要がある。 さらに、不均一電界を利用した液晶デバイスである液晶マイクロレンズと同じ円形穴形パターン電極構造を用いて、同様な実験を行った。この場合にはループ状の分子配向欠陥が発生するが、大まかな挙動はスリット状電極構造の場合とほぼ同様であることがわかった。一方、電極構造、分子配向処理法を最適化すること、また新しい試みとして微量のポリマーを混合する手法により分子配向欠陥を抑制できる可能性が見い出された。
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