研究概要 |
本研究では、希薄磁性半導体Cd_<1-x>Mn_xTeにおいて不純物ド-ピングした試料を作製し、伝導キャリアと磁性元素Mnとの間の交換相互作用に起因する特異な電流磁気効果の解明を行うことを目的として、まずは母体結晶であるCdTeへのn型のド-ピングを試みた。 具体的にはMBE法によりヨウ素(CdI_2)をn型ドーパントとして用い、GaAs基板(100)面上にCdTeバッファー層(約1μm)を介して、CdTe:I層を1〜1.8μm成長させた。蒸発源としてCdTe,CdおよびCdI_2を用い、Cd,Teの分子線強度比は2:1とCd過剰雰囲気下で成長を行った。また、成長中の基板温度は250℃と比較的低温で成長させた。 作製した試料はX線回折測定により結晶構造評価を、ホール係数測定によりキャリア濃度、移動度を、また低温でのフォトルミネッセンス測定により不純物準位の評価を行った。ホール係数測定の結果、CdI_2セルの温度を180℃から210℃に上昇させると、キャリア濃度は5×10^<17>cm^<-3>から2×10^<19>cm^<-3>と増加した。しかし移動度は最大で100cm^2/V・sec程度で、バルク試料で報告されている値に比べて、約1桁小さい値にしか達しなかった。また、ヘリウム温度でのフォトルミネッセンス測定では、1.59eV付近にCdサイトを置換したヨウ素が作る浅いドナー準位によると思われるシャープなピークが観察されている。 これらのことから、成長中に取り込まれたヨウ素の多くはCdサイトを置換し、活性なキャリアに寄与していると考えられるが、移動度が予想より低いのはCdTe:I中に欠陥が多く存在しているためではないかと考えられる。今後は、この点における改善のため、MBE成長条件のさらなる最適化を行う必要があると思われる。
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