本研究では、InP基板上MgZnCdSe II-VI族半導体を用いた量子細線の作製と短波長可視光レーザへの応用を目的として、MgZnCdSeの結晶成長及び物性評価からレーザを作製するための基礎的な条件について調べ、さらにZnSe/CdSe超格子による量子細線構造の自己組織化について検討した。以下に具体的な内容を示す。 1.MgZnCdSeを分子線エピタキシ-法により成長し、低温フォトルミネッセンス(PL)法により評価を行った。その結果、15KにおけるMgZnCdSeの禁制帯幅のMg組成(x)依存性がEg=2.19+1.44xであることが分かった。また、ZnCdSe/MgZnCdSe量子井戸のPL測定による評価から、ZnCdSeとMgZnCdSeのエネルギーバンドオフセット比(ΔEc/ΔEg)が0.90であることが示された。 2.MgZnCdSeの反射率測定より屈折率を見積り、屈折率のMg組成依存性を系統的に調べた。さらに求めた屈折率を用いて多層膜分布プラッグ反射鏡を設計し作製したところ、98%の高い反射率が実験的に得られた。このブラッグ反射鏡は面発光レーザ等の面型光デバイスへの応用が期待される。 3.MgZnCdSe歪量子井戸レーザの特性を理論的に解析した。ここでは、歪量子井戸のエネルギーバンド構造をルッティンガーハミルトニアンを用いて計算し、これより発振波長やレーザ利得及びしきい値電流密度を求めた。 4.ZnSe/CdSeの短周期超格子を作製し評価した。その結果、PL測定により得られたエネルギーバンド端がZnSe/CdSe超格子が単純な一次元の多層膜構造となっていると仮定した場合の計算値よりも低エネルギー側にシフトしていることが分かった。このことは、ZnSe/CdSe超格子において量子細線等の多次元構造が自己組織化より形成されていることを示唆している。
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