自然形成法によって、II-VI族半導体の量子ドットや量子細線の作製に成功した。また、顕微分光法などによって、これらの量子構造およびCuClの量子ドットの光学的性質について研究を行った。 ZnCdSeの量子ドットは成長表面の凹凸を利用した。(110)面上へのZnSeのMBE成長は難しく、成長時のSeとZnのビーム比は1のときしか二次元的な成長が得られない。つまり、p(Se)/p(Zn)≠1のときは、成長表面に凹凸が生ずる。この上に禁制帯幅の小さいZnCdSeを少々成長させ、さらにZnSeでカバーすれば、発光効率の良いZnCdSe量子ドットが自然に形成される。まず、結晶成長用のZnSe基板が市販されていないので、MBE法でGaAs(001)基板上へZnSeの厚い膜を成長した。このサンプルをへき開することによって、平坦なZnSe(110)面を得た。そして、二回目のMBE法でこのへき開面上へZnSe-ZnCdSe-ZnSe三層を成長し、量子ドットを形成した。顕微分光法やカソードルミネッセンス測定によってドットからの発光が確認された。三次元的量子閉じ込めを反映した熱的エネルギーk_BTよりシャープな発光線が観測された。 ZnCdSeの量子細線の自然形成は選択成長および組成変調を利用した。へき開によって得られたGaAs(110)面に、常にステップが存在する。このような面上へ結晶成長をすると、ステップのトップエッジに優先的に成長する。そして、平坦ではない表面への混晶の成長は混晶組成の編析が発生しやすい特徴がある。これらのことより、ステップのトップエッジに組成の違いからZnCdSe量子細線が自然に形成された。このような自己組織した量子細線の長さは、これまでの報告より遥かに長く、ミリメータルまで及んだ。
|