表面・界面に存在する水素に関連した研究は、その物理的、化学的な性質を解明しようとする基礎的観点と水素終端表面に発現する新しい物性を半導体プロセスの低温化やデバイスの微小化に利用するという応用的観点の双方からその重要性が認識され、最近特に関心が高まっている。そこで、化合物半導体表面に水素原子が吸着したときの、水素による表面物性の変化を走査トンネル顕微鏡分光法(STM-STS)、イオン散乱分光法(ISS)によって調べた。以下に得られた知見や今後の予定を示す。 1.清浄表面構造の解析 化合物半導体(GaP(001))清浄表面の構造解析をSTM-STS及びISSを用いて行った。安定相といわれている4×2構造は、1ユニットセル当たり最表面に2つのGaダイマーと第3層目に1つのGaダイマーが存在することがわかった。さらにダイマー間距離は約0.27nmであることがわかった。 2.水素吸着表面構造の解析 水素吸着によるGaP(001)表面構造の変化の様子をSTM-STSを用いて解明することを試みた。水素曝露によって得られた表面は、4×2構造と2×4構造を持っていることがわかった。4×2構造は清浄表面と同じ周期性であるが、実際は異なった構造(zigzag構造)であった。2×4構造は1ユニットセル当たり3つのP原子ダイマーの存在を示唆する結果が得られた。 今後、清浄表面及び水素終端表面上における金属薄膜成長様式について調べる予定である。
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