今年度は、1.5TWのチタンサファイアレーザー(近赤外)を用いたXeクラスターの励起実験であり、XeのM殻遷移(〜1keV)とXeのL殻遷移(〜4keV)の観測を行った。M殻遷移の観測には平面型のX線結晶分光器を用い、L殻遷移観測には集光型のvon Hamos型分光器を用いた。L殻遷移はM殻のそれに比べ信号が桁違いに弱いためである。また、イリノイ大学におけるKrFレーザー(紫外)の結果と照らし合わせてみることで、Xeクラスターの多光子的内殻励起の効率の波長依存性が明らかになる。この結果判明したことは、Xeクラスターの励起源として近赤外光を用いた場合、特にL殻輻射を励起する場合を考えた場合、紫外光励起に比べ極めて効率が悪くエネルギー変換率にしておよそ3桁低くなることがわかった。ここで得られた知見は、Xeクラスターの多光子的内殻励起を利用したX線レーザーを考えた場合、励起波長を紫外光にすることが極めて重要であるということである。今後は、TW級の紫外レーザーシステムの準備とチタンサファイアレーザーシステムのさらなる超短パルス化によるパワーアップとそれらを用いた実験を予定している。
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