レーザー媒質の飽和増幅を介して非線形分極を誘起するのに必要な光強度はレーザー活性種であるイオンの誘導放出断面積とレーザー上準位寿命の積に反比例する。Cr^<3+>に比べ、Nd^<3+>は誘導放出断面積は数倍大きく、また、実験にNd : YAGレーザーを光源として使用できることから、実験が用意である。そこで、前段階としてCr^<3+> : LiSAF等の代わりにNd : YAG結晶を非線形媒質として使用し、縮退四光波混合配置によるホログラム記録、位相共役波の再生実験を行った。フラシュランプ励起Nd : YAGロッド中にQ-switch Nd : YAGレーザー光(パルス幅8ns)を入射して、四光波混合を行った結果、シグナル光およびポンプ光フルエンスがそれぞれ1mJ/cm^2、60mJ/cm^2で位相共役波反射率は20%に達した。また、ホログラムとして重要な画像の忠実度をシグナル光と位相共役光のM^2から評価した。忠実度はレーザーロッドヘシグナル光を集光するレンズのNAに大きく依存する。レンズのNAを小さくすると、結晶中でシグナル光、ポンプ光の相互作用長は大きくなり、反射率は向上する。しかしながら、非線形増幅の効果を大きく受けて、シグナル光の持つ空間的な高周波成分は再現されなくなり、位相共役光のM^2はシグナル光のそれより小さくなることがわかった。このことは、回析効率、忠実度のトレードオフからホログラム記録に最適なNAが決まることを意味する。これらを踏まえて、今後Cr^<3+> : LiSAF等のCr^<3+>イオンドープレーサー結晶で実験を行う予定である。
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