1.レーザ特性の量子論的解析:非線形光学結晶を含む半導体励起固体レーザが単一周波数発振している際、その出力光の雑音特性を記述する理論を提案した。従来の量子力学的理論では、共振器内の光の場をほぼ一様と仮定していたため、この仮定が崩れる高励起状態に関しては、正しい予測が不可能であった。この困難を克服するため、量子雑音の空間発展を記述する理論を共振器内部の場に適用することを提案し、レーザ共振器内高調波発生システムへの応用を試みた。 この結果、従来の予測とは異なり、非線形変換効率が極めて大きくなると、出力光雑音が増大する可能性を明らかにした。この原因は、システムの動作点を規定する飽和が、主として非線形損失によって与えられ、レーザ雑音の抑制機構である利得飽和が顕著に現れないためである。 2.光非線形効果によるレーザ特性の改善に関する実験的検証:定在波共振器を用いたレーザシステムを構築し、これに非線形光学結晶(KTP)を挿入することで、緩和共振雑音のスペクトルピークが13dB程度低減されることを観測した。しかし、発振周波数の複数化に伴うモード競合雑音の発生により、低周波域における雑音特性が劣化することが明らかになった。この不具合を克服するため、現在、リング型共振器を用いたシステムを構築し、単一方向発振を試みている。 3.励起高帰還変調による雑音特性の改善:上記2.で構築したレーザシステムについて、励起用半導体レーザの注入電流を負帰還制御することにより、最大で30dB程度のスペクトルピークの低減を達成することができた。しかし、緩和共振周波数より高い周波数域で、帰還回路に起源を持つと思われる過剰雑音の存在も確認された。
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