研究概要 |
フォトニックバンド(PB)結晶により自然放出光の単波長性や指向性を高めることで,半導体レーザの効率の向上が期待できる.本研究では,3次元PB結晶を光デバイスに応用するための予備研究として半導体2次元PB結晶を製作し,その光学特性を明らかにすることを目的とした.我々の2次元PB結晶は,GaAs(111)B基板上の酸化膜に微細パターンを描画して酸化膜のマスクを作った後,有機金属化学成長法により選択結晶成長を行ってPB結晶を製作した.それはGaAsの微小六角柱が波長サイズ間隔の三角格子配列した構造である.またGaAs六角柱中にlnGaAsの量子井戸層を導入し活性領域を設けることでフォトルミネッセンス測定を行えるようにした.特に,基板平行方向(六角柱垂直方向)の放射光を観測して結晶の効果を調べた.以下に研究成果を述べる. 1.基板垂直方向の発光スペクトルを観測したところ,設計に添ったlnGaAs層からの発光が確認でき,一方,六角柱に対して垂直方向への放射光のスペクトルを観測した結果,理論解析と一致する波長域にフォトニックバンドギャップによる放射強度の低いスペクトルが得られた. 2.その放射強度が低い波長域は放射光の偏光方向によって違いがあることが,解析結果と同様に測定でも比較できた. 3.更に,結晶に対する放射方向を変えて同様に放射スペクトルを測定したところ,放射方向によってバンドギャップの波長域が変動する傾向を観測した. これまでの半導体の2次元PB結晶の光学測定結果より,その結晶で構成される2次元光共振器の実現が可能であると考えられる.さらに,共振器を構成し,2次元PB結晶共振器の可能性を調べていく予定である.
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