ダイヤモンド光伝導素子を高出力THz放射源として応用させるためには、その光伝導特性を十分に理解しモデル化する必要がある。特にCVDダイヤモンドにおける粒界による制御性は、THzの放射スペクトル、出力に大きく影響を及ぼすので、実験的なスケーリングを確立させる必要がある。そこで本研究は様々な粒径をもった多結晶ダイヤモンドフィルムを作成し、その光伝導特性を測定することで、移動度、キャリヤ-寿命といったパラメータに対する粒界依存性を明らかにした。その結果移動度は粒径のよりd^<0.42>で、キャリヤ-寿命はd^<0.18>で変化することが分かった。また、キャリヤ-のコレクション距離はキャリヤ-速度が飽和しない領域ではd^<0.59>で変化し、これにより高速スイッチングのためには粒径が1μm以下のものに1×10^6V/cmといった強電界を印加することで達成でき、スイッチング速度は0.1μmの粒径ではピコ秒を切るものが得られることが分かった。一方、THz放射に対しては計算機シュミレーションモデルを構築し、その強度に対する光伝導素子のパラメータ依存性を調べた。この結果ダイヤモンドは通常このような研究に使われるGaAsに比較して4桁も高い放射強度を実現でき、このことは主にダイヤモンドの高い絶縁破壊強度から来ていることが明らかになった。また、これまでの表面スイッチングによる放射に対しバンドギャップ以下の光子エネルギーを持った光をスイッチングレーザーとして用いることで、体積放射という異なった概念を持ち込み、出力エネルギーの増大が可能なことを示した。今後の課題としては、THz放射と励起レーザー光の位相制御が高強度放射の鍵であり、このことの早急なデータベースが必要となるであろう。
|