研究概要 |
腐食溶液中(0.1ml/lのNa_2SO_4溶液)において工具鋼(SKD61)をアルミナセラミック球で摩擦し,そのときに発生したAE信号を測定した.試験片の2種類の分極曲線(通常とポテンシャルパルス法)をとり,摩擦部では腐食摩耗が進行し,非摩擦部では不動体化し腐食が進まない試験片電位を決定した.摩擦試験は全振幅10mmの往復動で,死荷重10N,5Hzで行った.参照電極に飽和カロメル電極,対極に白金電極を使用し,1000mVの電位を加えた.この腐食摩耗試験は金型の複合電解研磨法への応用が考えられるので,試験片表面には放電加工を施した. 試験片の放電加工面は27μm程度の加工変質層が存在する.この条件における腐食摩耗は,約2万サイクルで摩耗深さが加工変質層より下に達することが分った. AE信号の解析方法として,ARモデル解析とそのAR係数の主成分分析および振幅分布のフラクタル次数を求めた.また,ニューラルネット解析のプログラムを作成し,主成分分析の第1,第2主成分とフラクタル次数を入力に用いてニューラルネットを学習させた.ニューラルネットの学習方法とし収束回数が極めて少なくてすむカルマンニューラルトレーニング法を用いた.その結果,摩耗の推移とともに第1主成分とフラクタル次数はともに推移し,約2万サイクルでほぼ一定値となった.これによりニューラルネットで加工変質層に到達したと思われる摩耗状態を8回試行した中で全ての場合で判断する事ができた.
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