研究概要 |
転がり接触面の摩擦・摩耗や転がり疲れの発生は,相対する二面の粗さと油膜厚さの大小関係を表すD値やAに依存するが,初期粗さばかりでなく,硬さや粗さ組合せ,作動条件によっても異なる接触面のなじみ状態も極めて重要な因子である. 従来,接触面の表面粗さはJISなどに規定される最大高さRy,算術平均粗さRaや表面凹凸の分布密度から求められる負荷曲線など二次元の断面曲線に基づく粗さパラメータによって表示するのが一般的であったが,より適切に表面粗さを記述するためには,例えばMajumdarの言う表面粗さの"ランダム性"や"粗さ構造のマルチスケール性"を表現する上では不十分である. フラクタル幾何学は種々のスケールでのミクロな突起形状を統一して取扱うことができる方法であり,砥粒加工によって仕上げられた面の表面粗さはフラクタル的な性質を持つことが明らかにされている. 本研究では,円筒研削加工により仕上げられた2円筒を最大高さRy=1.0/0.2μm,5.0/5.0μmおよび5.0/0.2μmの組合せで転がり-滑り接触させ,同一箇所を繰返し精度よく測定できるよう工夫された三次元粗さ測定機を用いて,摩擦・摩耗や塑性変形によるミクロな粗さ突起の形状変化を計測した.そして,0.5mm×0.5mmの解析領域において測定方向に対するスケールτと構造関数S(τ)の関係を求めるとともにτ<10μmでのS(τ)を用いたフラクタル次元を算出した. その結果,転がり接触面のミクロ形状変化を評価するための1パラメータとして構造関数S(τ)の有用性を確認した.また,接触面のなじみ性に応じたフラクタル次元の変化が認められた.
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