研究概要 |
原子力・化学・航空・宇宙関連機器などに多く見受けられる気泡流乱流現象の解明のため,数値解析法と画像処理計測法の開発の2方向から研究を遂行した.数値解析では気泡間相互作用力など気泡流中のミクロな現象をDNSにより定量的に明らかにし,この効果を考慮したラグランジュモデルによる大規模数値計算により,気泡流中の乱れの構造を解明した.特に気泡群の上昇によって誘起される液体流速の乱れの波数スペクトルが単相流におけるコルモゴロフの-5/3則より大きな勾配で低減することが判明した.また気泡に作用する揚力は乱れを抑制させ,反対に気泡間相互作用力は乱れの生成を促進させることが明らかとなった.このような結果は世界的にもまだ報告されていない.以上の成果は日本機械学会および数値流体力学会主催の2つの講演会で発表された.一方,画像処理法に関しては,気相体積率の三次元計測法に重点をおいて研究し,独自の推定計測手法ERRを開発した.ERRモデルは気泡流に関する直交二方向からのステレオ可視化画像から,ノイズ除去・二値化・スケール補正・二次元ボイド率計測・三次元ボイド率推定を行うもので,気泡の重なり頻度が高い高ボイド率の気液二相流でもボイド率の三次元分布を正確に推定計測する手法である.これについても従来まで例を見ない画期的な画像計測法であり,2つの国際学会で講演発表された.これらの成果を踏まえ,平成8年度後半は,気泡プルーム,気泡流ジェット,壁面に衝突する気泡,自由界面で破裂する気泡につき可視化・画像解析を実行し,液体の乱れと気泡運動の相互作用,気液界面運動と乱れの相関,気泡乱流拡散現象と固体壁面での反射現象を次々と解明した.これらの結果より,ラグランジュモデルのLES化と乱流渦-気泡間の干渉モデルの開発など,より高精度で実用的な解析モデルの構築が可能となり,本研究が飛躍的に発展するための道が開かれた.
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