半導体製造などにおける搬送工程では、クリーンな環境が求められていると同時に、精密で高速な位置決めが要求されている。また、対象物が壊れやすく強い力で把持できない搬送工程やめっき、化粧処理工程などにおいて表面の品質を維持しなければならない場合、さらに極低温、極高温で対象物をハンドで直接支持できない場合などにおいても、非接触搬送が有効な手段となる。このように対象物の非接触なマニピュレーション技術を確立することは実用的な意味からも非常に重要な課題である。 そこで本研究では、多関節(3関節)ロボットアームを製作し、その先端にハイブリッド電磁石とレーザ式変位センサからなる電磁グリッパ(非接触把持機構)を取り付け、磁性体を空間的に搬送するシステムを提案し、その実現性を実験的に確認することを目的とした。 対象物の位置は水平(x、y軸)方向と鉛直(z軸)方向の3次元的計測を行い、これらにコロケ-トするように配置したハイブリッド電磁石を利用して3方向からの非接触把持を行う予定であったが、水平方向に関しては対象物を点接触で位置決めを行い、本年度中には、鉛直方向のみの非接触把持の実験的検討までしか至らなかった。しかし、一軸方向のみではあるが安定な非接触把持が実現できることを確認した。今後の課題として、3次元的非接触把持の実現はもちろんのこと、空気中での把持とともに水中での把持も行い、アームの運動に伴う対象物周囲の流体抵抗の変化による制御性能への影響も考察することを予定しており、本年度得られた結果は今後の重要な基礎資料となる。
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