環境問題解決のためには、製品ライフサイクルを閉ループ化するための、新しい設計、運用、リサイクル方法を開発する必要がある。この問題の解決のための枠組みとして、我々は「インバース・マニュファクチャリング」を提案してきた。 本研究の目的は、上記の課題の実現要素技術として、機械の使用履歴データを収集し、それに基づき保全、部品の再使用、リサイクルの計画を動的に行なう手法を提案することにある。本科研費研究の範囲では、機械の使用履歴データを収集するシステムを試作した。これにより以下の点を明らかにすることを目的としている。 ・機械の劣化状態の把握、余寿命予測に有効なデータを収集可能であるか。 ・一般に機械の寿命、劣化は設計時にある程度予測されているが、実際の使用環境下ではこの予測と異なる可能性が高い。この相違を明らかにする。 ・一般のモニタリングが短期的な機械の状態決定に利用されるのに対して、本研究は長期的な劣化傾向管理、動作履歴の蓄積が目的であるという意味で大きく異なる。この相違を明らかにする。 ここで言う使用履歴データとは、機械を取り巻く使用環境、機械の操作、保全(故障、保全作業、部品交換等)に関する長期的な履歴データである。このような情報があれば、各部品の劣化状況の把握、余寿命の予測が適切に行なえると考えられ、さらに、設計変更、保全、再利用、リサイクルのための基礎データとして利用できる。 本研究では、複写機の機械系の部分の劣化を対象として実験機を構築した。本システムで取得するセンサ情報は14種類であり、さらに複写機内のコンピュータから情報を取得する。この実験システムで状態収集の試行的な実験を行ない、有効にデータが収集可能であることを検証した。ただし、問題点として、センサの信頼性、キャリブレーションの問題が明らかになった。
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