研究概要 |
大電流パルスアーク放電は,ギャップスイッチのクロージング・フェイズとして多くのパルスパワー発生装置で用いられている。しかし,アーク抵抗の時間的変化は,ナノ秒のオーダで数桁変化する電圧の正確な測定の困難さから明らかにされていない。本研究の目的は,正確に測定可能な絶縁破壊電圧とアーク電流を用いて回路方程式を解くことによりアーク抵抗の時間的変化を求めること,その予測法を構築すること,かつ抵抗を決定する諸物理量を明らかにすることであった。実験は,分子性ガスや希ガス,負性ガスなど多くのガス種に対して,気圧やギャップ長などのパラメータを変えて行われた。得られた成果を以下にまとめる。 アーク抵抗は電流が増加する領域で急激に減少し,電流最大付近で最小値となった後,緩やかに増加することが明らかとなった。この時間的変化に関する予測は適当な提唱式を用いることで予測可能となるが,その際最大電流時の抵抗値(ほぼ最小値となる)を予測する必要が生じる。抵抗の最小値を気圧とギャップ長の積で規格化した結果,規格化された抵抗値は最大電流の関数となることが分かった。気圧とギャップ長の積で規格化した電流最大時のアーク電力は電流の値に対して,わずかに増加する傾向を示したのち,飽和することが明らかになった。最大電流の値に対して電力の変化が小さくなることを利用して,各種ガスにおけるアーク抵抗の最小値の予測を行った。その結果,予測結果と実験値は比較的よく一致した。本手法を用いることで,一つの条件における消費電力の値を用いて,さまざまな条件におけるアーク抵抗の最小値の予測が可能となり,その値をアーク抵抗の時間変化を表す式に用いることでアーク抵抗の時間的変化が予測できるものと思われる。
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