これまで窒素ガリウム(GaN)は主にサファイア基板上に結晶成長が行われてきた。しかし、サファイアは絶縁体であるためにデバイス構造に制限があり、導電性基板上への結晶成長が注目されている。本研究では有機金属気相成長法(MOCVD)でシリコン(Si)基板上に燐化ガリウム(GaP)を中間層としてGaNの結晶成長を行った。(100)Si基板に900℃で約2μmのGaPを成長した後、結晶成長温度を610から810℃まで変えて約2μmのGaNを成長し、表面モホロジー、走査電子顕微鏡、X線回折等によって評価した。 結晶成長温度が610℃では表面にクラックは発生しているものの結晶は比較的平坦であるが、結晶成長温度を上げると表面モホロジーは悪化した。走査電子顕微鏡観察によると610℃で成長したGaNはコラム状をしているが表面は平坦である。結晶成長温度の増加と共にGaPの膜厚が薄くなり、同時に表面が荒れていた。従って、成長温度が高いとアンモニアがGaPと反応することによって表面が荒れた窒化物ができ、その上のGaNの表面モホロジーが悪くなると考えられる。X線回折から成長温度610℃ではGaN(0002)の大きなピークが得られたことから、GaNはc軸に配向していると考えられ、Si(100)基板上に六方晶であるGaNがエピタキシャル成長していることがわかる。成長温度を増加すると(0002)ピーク強度は減少し、(10-11)ピークが現れ、多くの積層欠陥が発生していることを示している。610℃で成長したGaNの2結晶X線半値幅は5.9minであり、良好な結晶が得られている。
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