研究概要 |
本年度、研究者はポリシラン分子結晶のエピタキシャル成長についての研究を行い以下の結果を得た。 (1)主鎖が基板に垂直と並行にエピタキシャル成長したそれぞれのPDMS蒸着膜の分子配列の様子を、コンタクトモードAFMメタノール液中測定によって観察した。その結果はX線回折、偏光顕微鏡像、偏光吸収スペクトルの結果から考えられる構造と一致する。 (2)蒸着膜のABSスペクトルは4.1eVにピークをもつがエピタキシャル成長により4.1eV以下の低エネルギー領域の吸収が増大する。これはエピタキシャル成長により長い非局在領域をもつ分子が増大したためである。また,蒸着により分子自体が短くなったのではなく長い分子の中でのシリコン原子約10個分の長さに局在していることを示す。 (3)EXスペクトルのピークは,ABSスペクトルの低エネルギー側からの立ち上がり付近に位置し、高エネルギー側に裾を引く。この結果は短い非局在領域からは発光されず最も長い領域にエネルギー移動してから初めて発光する過程を表わす。また,このエネルギー移動中に無輻射再結合過程が存在しているために高エネルギー領域での発光強度は低い。 (4)PL強度は低エネルギー領域の吸収が大きいほど強い。これはエネルギー移動を伴わない最も発光効率のよい長い非局在領域が増大するためである。 (6)PLピークとEXピークの差であるストークスシフトは結晶領域が広くなりランダム性が少くなるほど小なさくなる。 (7)4KにおいてPLスペクトルにいくつかのピークが観測された。ラマン測定の結果を考え合わせるとこれは最低励起準位から基底状態の振電準位(Vibronic band)への遷移によるためと考えられる。
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