研究概要 |
CVDダイヤモンド表面の結晶性評価において,カソードルミネッセンス特性結果は,今後の研究指針を与える知見を示した.まず,CVDダイヤモンドは天然ダイヤモンドに比べて結晶性にダメ-ジ受けていることが示唆された.そしてこのダメ-ジはプラズマの状態によって大きく依存していた.カソードルミネッセンスの特性結果は表面の結晶性のみならず表面化学吸着状態をも反映し,ダイヤモンド表面への科学吸着に起因した表面バンドベンディングが生じていることが示唆された.これらの結果からダイヤモンドエレクトロニクス応用へ向けて,ダイヤモンド表面結晶性改善を目的として,さらに次の二つの観点からアプローチを行った.1.ダイヤモンド表面上へのゲート絶縁膜堆積プロセスと界面準位.2.ダイヤモンド成膜プロセスとプラズマダメ-ジ.1.においては,as-grown CVDダイヤモンド表面にCaF_2ゲート絶縁膜を基板温度室温で堆積することにより,従来の堆積プロセス(基板温度500℃)より,ダイヤモンドMISFET特性において,相互コンダクタンスに飛躍的な向上がみられた.これは絶縁膜堆積時のプロセスにおいて,残留酸素成分による界面準位の形成が抑制されたことが原因として推測される.一方2.においては,ダイヤモンド成膜ガスへの添加ガス(酸素,キセノン)効果について,プラズマインピーダンス測定を駆使して評価を行った.このなかでキセノン(Xe)ガスを少量添加することによって,CH_3ラジカルの供給を減らすことなく,プラズマのダメ-ジを抑制する可能性が示された.今後の研究展開として,1.2.の研究アプローチを相互に関連させて,プラズマダメ-ジを抑制した高品質のダイヤモンド薄膜を作製し,キャリヤ移動度の向上を目指す.
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