超伝導材料の臨界電流密度を向上させるためには、超伝導体内部で量子化された磁束格子を効率よくピン止めするピンニングセンターを導入する必要がある。本研究では、次世代超伝導材料の臨界電流密度の向上を目的として、次世代超電導材料であるNb_3AlやBi系酸化物超伝導体に対して、塑性加工などの従来の経験的手法によらずにピンニングセンターを導入する手法を提案するための基礎的研究を行った。 研究の結果、以下に示す知見が得られた。 1.Nb_3Al超伝導テープ線材を作製し、到達温度をコントロールする通電加熱法を用いることにより、臨界温度が高いNb_3Alを作製し、実用レベルに近い臨界電流密度を得た。 2.Nb_3Al超伝導テープ線材の微視的構造と臨界電流密度特性を比較・検討した結果、中間化合物であるσ相の析出により、高磁界における臨界電流密度特性が変化することが示された。これは、σ相が人工的に導入するためのピンニングセンターの1つとして有効に作用する可能性を示すものである。今後、臨界電流密度の定量的な評価を行い、特性の詳細な検討を行う予定である。 3.将来、酸化物超伝導体にピンニングセンターを導入するために有効と考えられるプラズマ溶射法を用いて、Bi_2Sr_2CaCu_2O_x酸化物超伝導膜の作製を行った。今まで十分に明らかにされれいなかった溶射条件や生成熱処理条件を明らかにし、熱伝導特性との比較検討を行った。今後、溶射時にピンニングセンターとなる材料を導入するために必要となる標準試料の作製が可能となった。
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