大規模集積回路における要の構成要素であるアモルファスSiO_2の薄膜をプラズマCVD法により作成し、その構造の不完全性と、絶縁材料としての物理的限界を示す真性絶縁破壊電界との間にいかなる相関があるかを調べた。 まず、フッ素添加の有無により、微視的構造の不完全性の程度が異なるSiO_2の作成を試みた。シンクロトロン放射光を光源として用い、光吸収測定と発光測定を行ったところ、全てのSiO_2に7.6eVの吸収帯が観測され、構造欠陥である酸素空孔の存在が示された。フッ素添加量が増大するにつれ、酸素空孔を原因とする4.4eV発光の時定数のばらつきが小さくなり、光学ギャップエネルギーが増加した。加えて、フッ酸溶液へ溶けにくくなり、赤外吸収分光測定から得られた∠SiOSi結合角のばらつきも小さくなった。以上のことから、フッ素添加により、無添加のSiO_2に比べ、構造が均一で不完全性の少ないSiO_2が作成されたことが確認された。 次いで、パルス幅1μsの方形波パルス電圧を用い自己修復性破壊を利用することで、真性破壊電界を測定した。フッ素添加量が増大するにつれ、破壊電界は増加した。この主たる原因の一つは、光学ギャップエネルギーが増加し、電子の衝突電離に要するエネルギーが増大したことがあげられる。光学ギャップエネルギーの増加は、構造不完全性の減少がもたらしたものと思われるから、本研究により、アモルファスSiO_2において構造の不完全性を減少させれば真性破壊電界を増大可能であることが示された。
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