本研究の目的は、高効率が期待できるCu(InGa)Se_2太陽電池において、禁制帯幅およびバッファ層を最適化し、最大の変換効率を達成することである。まず、Cu(InGa)Se_2光吸収層の作製条件を最適化し、グレーデッドバンドギャップ構造を実現した。次に、従来用いられてきたCdSに代わるバッファ層としてIn_xSe_yおよびZnIn_xSe_yを導入した。以下に、本研究の成果を示す。 1.Cu(InGa)Se_2光吸収層の作製条件を最適化し、表面付近でGa組成が少なく、基板付近でGa組成が多いグレーデッドバンドギャップ構造を実現した。この構造においては、光によって励起された少数キャリアが内部電界によって加速され、効率よくp-n接合界面に送り込まれる。成長の各段階における反応過程をオージェ電子分光法により明らかにし、最適なバンドプロファイルを有するCu(InGa)Se_2光吸収層の作製に成功した。 2.従来、Cu(InGa)Se_2太陽電池のバッファ層としては、溶液成長法によるCdSが用いられてきたが、環境保護および製造コストの削減という観点からすればCdSに代わる材料が望ましい。そこで、本研究では、Cdを含まない新しい界面層としてIn_xSe_yおよびZnIn_xSe_yを提案した。これらの界面層は、Cu(InGa)Se_2光吸収層から同一MBE装置内で蒸着法によって連続製膜が可能であり、溶液成長装置を全く使用しないといった特徴を有している。まず、オージェ電子分光法により界面層を評価したところ、基板温度300℃程度ではある程度の相互拡散が生じているが、良好なヘテロ接合が形成されていることが分かった。これらの界面層をCu(InGa)Se_2太陽電池に適用し、変換効率13%以上が得られた。特に、ZnIn_xSe_yを界面層に用いた太陽電池では15.1%と高い変換効率が達成された。
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