粒子検出装置に組み込まれる薄肉ソレノイド型超伝導電磁石では、コイルの粒子透過性を確保するため、安定化材に通常使用される銅ではなくアルミを採用した超伝導ケーブルでコイルを巻いている。その安定化材アルミの超伝導部に対する断面積比率がコイルの擾乱に対する安定性を確保する目的で30:1程度の非常に高い導体がこれまで製作されてきた。しかしながら極低温では安定化アルミの抵抗率は非常に低いため電流拡散速度は遅く、擾乱によって常伝導状態になった超伝導部分からの分流が安定化全体に分布するまでに数秒は要してしまう。すなわちこれまでの設計では安定性の観点からは過剰な安定化材が付加されていたと考えられる。本研究はアルミ安定化超伝導線の安定性を安定化材への分流に注目してシミュレーション及び実験で確認することを目的としておこなった。 本研究の第1段階としてアルミ安定化超伝導線中の分流状態測定装置を開発努力した。既存のクライオスタット、超伝導双極電磁石を組み合わせて被試験アルミ安定化超伝導線に5テスラまでの磁場を印加できるようにする。双極電磁石の内側に被試験線を固定するがそのためのガラスFRP製のホルダーを製作する。ホルダーは被試験線を電磁力によって動かないよう固定するとともに、疑似断熱状態になるよう保持する。又このホルダーには線材中の電流分布を測定するためのホール素子やサーチコイル、電圧タップも固定する。被試験導体にはカーボンペーストヒーターを取り付け強制的に超伝導状態を破壊する。測定は電磁オシログラフを用いる。 分流状態の測定は安定化材中を電流が流れるために発生する抵抗性電圧を直接電圧タップによって測定する方法と電流路に沿って分布する磁界をホール素子によって測定する間接的な方法を採っている。
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