クーロン・ブロッケード現象を利用した、シングル・エレクトロン・トランジスタまたは類似の基本となるシングル・エレクトロン・デバイスすなわち基本単電子ユニットを、多数個組み合わせることによって実現されるシングル・エレクトロニクスは、既存の半導体デバイスの抱える様々な限界を打ち破る可能性を秘めており、次世代エレクトロニクスの担い手として、その研究・開発は極めて重要である。本研究では、数あるシングル・エレクトロン・デバイス作製法の中から、比較的安定した特性が得られることで評価の定まっているアルミニウム・アルミニウム酸化膜微小トンネル接合系を研究ターゲットとして選択した。試料の作製には、この系で通常用いられている、感度の異なる複数のレジストを組み合わせることによって中空ブリッジ構造を作製するPMMA/coポリマー系多層レジスト技術に、50ナノメートル角程度の極めて微小な断面積をもつトンネル接合を形成するための斜め蒸着法を組み合わせた手法を利用した。現在までに、上記の手法を用いて、もっとも基本的なシングル・エレクトロン・デバイスのひとつである、シングル・エレクロン・トランジスタの作製に成功した。また、その電気的特性を希釈冷凍機を用いることによって10mKの低温で測定し、正常に動作することを確認した。さらに、シングル・エレクトロニクスの実現可能性を検証するために欠かすことのできない、複数個のシングル・エレクトロン・トランジスタを組み合わせた基本単電子ユニット接合系について、試料の作製およびその電気特性の評価を継続中である。
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