研究概要 |
本年度に行った研究業績を要約すると次のようになる. 1.量子数値解析法の開発:受信量子状態制御システムを実現する物理過程として,光非線形現象に基づくユニタリ過程を考え,その量子論的特性を解析するための数値解析法を確立した. まず,入力量子状態を与えたときの出力状態を数値計算する手法を確立した.これは,従来の量子数値解析法であるオイラー法のもつ時間離散による誤差を回避し,かつ解析時間が大幅に短縮される.次に,システムの誤り率を自動的に求める方式を開発した. 2.光非線形現象の出力の条件の導出:提案した光非線形現象を用いたシステムに関し,どのような条件を満たすものが最も望ましいかを考察した.その結果,信号の生起確率が等しい場合,量子最適限界を達成する光非線形現象の出力の必要十分条件を導出し,そのための証明を与えた.また,具体例として確率分布を数例与えた. 3.光非線形現象の量子近似解析:光非線形現象の量子雑音特性を,ハイゼンペルグ方程式の線形化近似により解析した.その結果,ポンピング光位相がある特定の値をとる場合においては,信号光が近似的にディスプレイスメントされることを明らかにした. 4.光非線形現象の量子数値解析:1.で開発した手法に基づき,提案システムの誤り率の数値解析をいくつかのケースについて行った.その結果,標準量子限界は克服されることがわかった.今後,他のケースについても本数値解析を適用し,その特性を詳細に分析する必要がある.
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