今年度に行った研究によって、得られた成果は以下の通りである。 (1)ヒルベルト曲線は自己相似性という興味深い性質をもっているにも拘わらず、その走査アドレス発生に時間がかかり、ハードウェア規模もラスター走査などに比べ格段に大きくなるため、走査方法として不適とされてきたが、申請者が提案したアルゴリズムを基にして、ヒルベルト曲線による走査アドレス発生のハードウェア化を検討し(論理設計、レイアウト配置)、実際に小規模のLSI(52ピン用)を試作した。 (2)(1)の成果を生かし、液晶ディスプレイを使ってヒルベルト走査による2値の画像表示装置を実際に試作した。 (3)ヒルベルト走査によるランレングス符号化を基にして人間の視覚特性を利用した濃淡画像圧縮技術について検討した。これは、ヒルベルト走査を適用した画像データベースを想定した場合、自己相似性を有するため、対話型環境に適した画像検索ができるという特徴がある。また、ラスター走査に比べて近傍情報をより保存するため、圧縮効率が良くなっており、濃淡静止画像の圧縮率が標準画像GIRLに対して0.49bit/pixelの画質を標準化手法のJPEGと比較した場合、ほぼ同等の画質であることを確認した。本手法は符号化処理においては JPEGとほぼ同じ処理時間であるが、複号処理にほとんど時間がかからず、JPEGの約1/100で済むという結果を得た。本手法は従来手法に比べて比較的簡単な処理で済むため、小規模のハードウェア構成で実現できるという見通しを得た。 (4)本研究により開発した濃淡画像圧縮手法をカラー画像にも適用できるように本手法の拡張を行った。
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