並列コンピュータの性能を決定する要因のひとつにプロセッサ間通信ネットワークがある。本研究では、スペクトラム拡散通信による多重化を用いた、通信路をルーティングなしに提供するプロセッサ間通信システムを提案し、計算機シミュレーション、実験により提案するシステムの有用性の検討を行った。 1.計算機シミュレーションにより、スペクトラム拡散方式の多重化特性の検討を行った。シミュレーション結果とハードウェア規模から、プロセッサ間通信システムに適した通信方式として、周波数分割多重化(FDMA)方式に直接拡散(DS)方式を組合わせた方式を用いることにした。 3.次に、シミュレーション結果の確認を行うとともに、通信用ハードウェア規模の評価を行うために、実験システムを構築した。実験システムは、ディジタル信号を扱うディジタル回路と変調・復調等のアナログ信号の処理を行うアナログ回路とのハイブリッド・システムとなった。ディジタル部の実装には、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)と呼ばれる再プログラム可能な論理デバイスを用いた。送信部は、キャリア信号(正弦波)をデータ信号で位相変調(PDK)することにより、直接送信波を生成する。受信部は、受信波とキャリア信号との乗算により、直接ベースバンド信号を取り出すダイレクト・コンバージョン方式とした。現状では、7個の送信機、1個の受信機を実装し、FDMAの実験を行っている。 4.今後は、実験システムをDS方式にも対応させ、実験により多重化特性の検討を行う。その後は、本研究で提案する通信方式を用いた、実際に並列計算機システムの構築を行い、実験により、計算機システムとしての評価を行う。
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