誤り訂正符号、特にT-out-of-M符号をランダムアクセス方式に適用した場合のスループット特性に関して検討を行った。本研究では、用いることにより、従来の報告では考慮されていなかったT-out-of-M符号化によって付加される冗長あるいは帯域拡大による特性劣化を考慮した。また、ランダムアクセス方式としては、最も簡便なスロット付きアロハ式を対象とした。 数値例の結果より、(1)T-out-of-M符号の符号化率あるいは帯域拡大率による特性劣化を考慮すると、与えられたM(通信回線上で衝突が見込まれるユーザのグループ数)に対して、負荷トラヒックが小さい場合には最適なT(T-out-of-M符号が衝突を解消することができるユーザ数)が存在すること、(2)符号化システムが非符号化システムを超える特性を示すために必要なT-out-of-M符号のsum rate(符号化率の和)に関する下界値が存在すること、(3)負荷トラヒックの増加にともない、T-out-of-M符号のsum rateに関する下界値も増加し、負荷トラヒックがある値を超えるとT-out-of-M符号はスループット特性を劣化させてしまうこと、等を明らかにした。 しかしながら、(1)T-out-of-M符号を用いた場合、スロット付きアロハ方式が本質的に有している不安定さを解消できるか否かの安定性等に関する検討、(2)T-out-of-M符号よりも優れた性能を有する誤り訂正符号の構成法・復号法、等に関しては今後の検討課題としなければならない。
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