研究概要 |
高速ディジタル電子装置が急速に普及するにつれ,電磁波による電子装置の誤動作が重要な問題となってきている.そこで,隣接する回路基板に誘導される雑音電圧がディジタル機器の誤動作を引き起こすメカニズムを実験および解析の両面から検証しディジタル回路のイミュニティ基準となる物理的要素を決定し,更に,この結果に基づき高速ディジタル回路の設計ルールを設ける指針を示すことが研究目的である. 補助金交付年度において,まず,CMOS論理ICで構成されたモデル回路を作製し,雑音電圧の周波数・振幅と論理信号のタイミングの関係,および誤動作頻度との相関を実測により明らかにした.測定は円形ループアンテナからモデル回路に一定振幅の高周波電磁界を照射し,このとき,論理IC入力信号の過渡部分に重畳する雑音をディジタルオシロスコープで測定し,照射電磁波雑音の周波数と入力信号に重畳する電圧雑音の大きさを測定した. 次に,実験で使用したCMOS論理ICの過渡動作特性をシミュレートするための線形等価回路モデルを開発し,回路シミュレータSPICEによりこの回路のアドミッタンスを求め,共振特性の解析を行なった. 測定の結果,CMOS論理ICは特定の雑音周波数に対して,その感受性が高くなること,また,その周波数は線形等価回路を用いて解析した共振周波数と深い関係があることが判った.交付申請時において,雑音振幅と回路誤動作の相関性についての知見を得ていたが,この知見を考慮して総合的に考察すれば,回路の共振特性と電子装置の誤動作の間に相関があるといえる.この結果は,電磁波雑音に対して,耐性のある電子装置を設計するための指針となるものといえる.
|