1.膜構造物の複合非線形性について 本研究では要素剛性を節点変位と要素変形の適合条件の非線形性に起因する接線幾何剛性から完全に分離することにより、幾何学的非線形性の剛体変位成分を厳密に評価できる接線剛性法を用いることにより、膜構造物の複合非線形挙動について一定の成果を得ることができた。 (1)接線剛性法における材料非線形性の評価 要素剛性の設定を各反復段階ごとに更新し、三角形膜要素の辺方向に離散化した辺張力に転嫁する手法を用いることにより、確実な収束性のもとに各降伏条件に整合する複合非線形解を得ることができることがわかった。 (2)リンクリング(しわ)について 通常・有限要素膜構造解析を行った場合のしわの形状は、メッシュ分割の構造形状に対する適合性に依存するが、本手法においては幾何学的非線形挙動の剛体変位成分を厳密に表現できるため、特別な数値操作を行うことなく、メッシュ分割を密にすればするほど、実形状に近いしわの形状解が得られる。 2.膜構造物の汎用形態解析への発展性について 本研究ではさらに、接線剛性法を用いた等張力曲面解析より実剛性を有する膜要素を張り付けた膜構造の応力・挙動解析に移行する際に不可避的に存在する残差不平衡力と、実膜要素内に発生する張力偏差の関係について明らかにした。(「石鹸膜有限要素構造を先行状態とする膜構造初期形状決定に関する考察」)また、以上の膜構造の力学的・幾何学的性状を統合的に取り扱うことのできる、ユーザーインターフェイスに優れた汎用プログラムの開発を行った。(「An Interactive Program for the Analyses of Membrane Structure」)
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