先般の阪神淡路大地震での広範囲かつ大規模な地盤の液状化は、液状化の起こり方に対するこれまでの教科書的理解を越えるものがいくつかあった。人工島のすべての砂が呆れるほどゆるい砂であったわけでは全然なく、また、目撃された液状化の多くは、地震後十数分もしてからようやく起こっており、液状化のすべてが、荷重がさった地震後には速やかに終息に向かったというのでは全然なかった。そこで、本研究ではなぜ飽和した密な砂地盤が地震後にようやく液状化(「遅れ破壊」)し、どのように数十分も継続して拡大してゆく(「進行性破壊」)のかを飽和した砂地盤の模型実験と数値計算により調べ、そのメカニズムを解明することが目的であった。 はじめに、水槽内に入れた平面ひずみ室内模型砂地盤(深さ15cm、幅90cm)を中央部で固定矢板で仕切り、上流側で水を急速に載荷した後、水位を一定に保った。(この水深は緩速載荷の場合には浸透破壊する水深よりも僅かに高いが、急速載荷では破壊しなかった。)すると、約10秒後に砂地盤は「遅れ破壊」した。 次に地盤厚さ等を模型実験のdimensionと合わせ、砂を過圧密土と見なして下負荷面カムクレイモデルを用いた水〜土連成の有限変形計算により、この密な砂地盤の遅れ破壊のシミュレーションを行った。その結果、計算でも地盤は水位を一定に保った後に十分な時間が経った後に「遅れ破壊」を示した。 これらの実験と計算から、実際の密な砂地盤が、地震の終わったあとかなりの時間遅れでようやく破壊(もちろん液状化)し、破壊域の進展にも相当の時間を要した可能性があったと考察した。
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