研究概要 |
貯水池内の水は上層ほど温度が高い温度成層を形成している.この成層化した貯水池に洪水で発生した濁質を大量に含んだ濁水が流入すると,貯水池の躍層部や水底に濁水層を形成する.このとき流入した濁水の温度が濁水層より上層の温度より高いと濁水は上昇し対流を形成する.このような温度と濁度という二つの異なる物質による拡散は二重拡散現象の一種である.本研究では,温度を制御するのが困難であるため塩水を用いて密度成層を作り実験を行った.実験では密度成層中に流入する濁水の挙動についてビデオを用いた詳細な観察を行うと同時に,水槽内の水をサンプリングすることによって塩分濃度及び密度を速度し成層中における濁水の挙動を明らかにした.実験によって得られた主たる成果は以下の通りである. (1)成層中に流入した濁水は濁質を沈降させるとともに密度を減少させる.これによって浮力を得た濁水の一部はフィンガリングを起こしながら成層中を上昇していく・このときのフィンガリングの水平方向スケールは1cm内外,鉛直スケール(長さ)は1-3cm程度であった.また,このようなフィンガリング現象は濁水層より上方の水が連続成層を形成している時のみ見られる現象であり,階段状の成層の場合には見られなかった. (2)フィンガリングによる対流によって濁水と成層が激しく混合する層(混合層)が形成されるが,濁水層内部では上方ほど濁度が高く,上方ほど塩分濃度が高い状態が形成されている.濁度と塩分濃度を合わせた全体の密度は下方ほど大きくなっており一時的に安定な成層を形成しているが,濁水の上昇が弱まり濁質の沈降が進行すると,塩分濃度の逆勾配による不安定が生じ間欠的な対流が発生する.特にフィンガリングが停止して混合層の上面が下降する際には混合層の上方に,ある一定の鉛直スケールを持った対流セルが形成され,これによって明瞭な不連続層が幾つも形成される.
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