アオコ毒ミクロシスチンは肝臓癌の発癌プロモータである。アオコの発生した湖沼水を水道水源とするところでは、水中におけるアオコ毒ミクロシスチンの挙動が問題となる。琵琶湖は周辺地域の水道水源として利用されているが、近年は南湖を中心として夏期にアオコの発生が見られている。そこで本研究では、琵琶湖を水道水源として利用している京都、大津、草津市において、抗ミクロシスチン抗体を用いるELISA法を用いて湖水および水道水のミクロシスチン濃度を測定した。今年は琵琶湖において、9月下旬から10月上旬にかけてアオコが僅かに発生し、それに伴って水中のミクロシスチン濃度は上昇した。しかし、水道水については、ミクロシスチンはほとんど検出されなかった。次にアオコ発生時における琵琶湖南湖のミクロシスチン濃度の平面分布を観察した。その結果、湖岸部よりも湖の中心部に置いて高濃度のミクロシスチンが観測された。以上、本研究は琵琶湖に置いてミクロシスチン濃度を経時的、平面的に測定した最初の報告である。この様に多数の水サンプルを測定しなければならない場合にはELISA法は非常に有用であることがわかった。しかしながら、1996年は例年に比べ、琵琶湖におけるアオコの発生が非常に少なかったので、1997年以降も観測を続ける必要がある。また、今後は液体クロマトグラフによる測定のデータとELISAのデータを比較し、測定値自体の信頼性を高める必要もある。
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