本研究では、粘塑性空間要素法を改良し、モデル壁型枠打設実験を行うと共に打設シミュレーションを行った。 (1)非定常粘塑性空間要素法プログラムの改良 壁打設シミュレーションに適した解析手法である粘塑性空間要素法を改良した。現行のプログラムに対し、境界面におけるすべりを考慮できるように改良した。また、流動時のひずみ速度分布を出力し流動状態き検討が行えるように改良した。 (2)小型壁型枠打設実験 試料性質と流動状況の関係を調べるため、小型壁型枠打設実験および中型壁型枠打設実験を行った。小型壁型枠は、W400×H300×D80およびD40で、壁心にモデル鉄筋をシングル配筋したものも用意した。試料には、水セメント比と高性能AE減水剤添加量により、降伏値と塑性粘度の2つのビンガム定数が調整された、モルタルおよび粗骨材最大径が10mmのフレッシュコンクリートを用いた。実験から、流動停止後の試料上面の勾配は、降伏値に大きく影響され、塑性粘度はあまり影響しないことがわかった。また、ある程度の密なシングル配筋は、壁厚を半分にしたのとほぼ同じ効果があることがわかった。 (3)中型壁型枠打設実験 小型壁型枠の結果から、より実施工条件に近い結果を得るため、高流動コンクリートを用いて中型壁型枠打設実験を行った。実挙動は複雑であるが、基本的には小型壁型枠の場合と同様の結論を得た。 (4)壁打設シミュレーション 改良された粘塑性空間要素法を用いて、上記実験の数値シミュレーションを行った。その結果、みかけのビンガム定数を入力値とするシミュレーションにより、配筋壁打設状況を定量化できる可能性が明らかとなった。
|