RC造スラブ付き立体骨組中の中柱近傍の柱-梁接合部試験体について一方向および二方向加力実験を行い、加力方法の違いが梁一スラブ系の終局曲げ耐力に与える影響を実験的に調べた。 実験パラメータは次のようである。 i)水平力の作用方向:骨組構面方向に対して0度(X構面方向)、45度および90度(Y構面方向) ii)スラブ筋量:普通(スラブ筋の配筋間隔;80mm)、少(同;90mm) 試験体は水平力を受ける立体骨組における中柱-梁の反曲点間近傍を取り出したもので、試験体総数は4体である。実験開始時に柱に約40tf(≒柱の断面積×0.3・Fc:コンクリート圧縮強度)の一定軸力を加えた後、水平力作用時に対応するせん断力を梁先端部に油圧ジャッキを用いて正負繰り返しせん断力を与えた。加力は正負交番の漸増変位繰り返しで、各サイクルにおける正負の最大変位量が等しくなるよう加力した。また、変位計により試験体各部の変位を測定した。さらにひずみゲージにより鉄筋のひずみ挙動を調べた。 梁自由端に加えて荷重-加力点の鉛直方向変位関係より、スラブ筋量の違いに関わらず、一方向加力試験体の曲げ耐力は、スラブ側曲げ引張、同圧縮の場合とも、二方向加力の場合を約20%上回っていることがわかった(梁の部材角が0.02radの場合で比較)。試験体各部に貼付したひずみゲージの値から、実験中、柱主筋は降伏には至らず、柱の二軸曲げの影響による見かけ上の梁の曲げ耐力の減少は生じていないこと、スラブ面内のひずみは二方向試験体のほうが一方向試験体を上回っていることがわかった。従って、梁が共有するスラブを介して作用する応力の影響により、二方向加力時の耐力が一方向加力時に比べ減少していると考えられる。 今後は、立体トラス理論に基づく、曲げ・せん断およびねじりモーメントを受ける梁の終局曲げ耐力の理論値と実験結果との比較、検討を行う予定である。
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