本研究は、今回の阪神・淡路大震災における住民の避難行動などを明らかにして、災害時における医療活動の効率的な運営を模索するとともに、医療・福祉施設の被災状況を文献などから明らかにして、適正な施設配置計画を提案することを目的としている。本研究で明らかになったことは以下の通りである。 1.灘区の各避難所への避難者の圏域を避難者名簿をもとにして分析した結果、80%避難圏は1Km程度とほぼ平常時の徒歩圏に当たることがわかった。したがって避難所や医療活動拠点は、今まで言われてきた広域拠点で対応するだけでは不十分で、もっと狭い地域ごとに対応できる体制づくりが必要である。 2.医療施設では、大きな被害を受けなかった施設においても、水道などのライフラインの被害により活動が大幅に制約されたことがわかった。したがって今後は、施設自体の耐震性の向上とともに、速やかに外部からの援助を被災地へ投入すること、被災地内部の患者を被災地外に転送するシステムづくりが要求される。 3.特に医療活動においては、平常時から全国的にネットワークを組んでいた組織ほど、被災地外からの支援が素早く行われ、地震後の立ち上がりが容易であったことから、医療施設同士のネットワークの強化が求められることがわかった。 4.福祉施設においては建設年度が比較的新しいものが多く、その耐震性のために被害の程度が軽かった施設が多く、高齢者の救援活動に大きな力となったことがわかった。今回の地震においては、障害者や高齢者などの弱者対策の貧しさが指摘されているが、こうした施設を緊急時に役立てる方策が将来とも必要である。 以上の結果より、医療・福祉施設の配置計画の提案としては、フェイルセーフの考え方を取り入れて集中配置よりも分散配置にし、それらをネットワークとして活用するシステム作りが将来の地震対策としても必要である。
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