代表者らが1995年より継続的に行ってきた、阪神・淡路大震災において避難所として使われた地域施設の調査のデータを分析することにより、避難所としての空間の使われ方の実態について明らかになったことは以下の通りである。 (1)地震発生当初、避難者の占有面積が1人1畳を下回る避難所が多く存在した。 (2)学校や集会施設、公園など多数の公共施設が避難所として使われたが、学校運動場や公園などのオープンスペースは屋内空間に比べ天候への対応に難がある一方用途の制限が少なく、炊き出しや物資保管、就寝、駐車など多様な機能に使われた。また学校運動場はその他に授業再開のための仮設校舎の建設用地としても使われた。 (3)地震発生当初、学校などの大規模な避難所では、避難者の生活のための機能以外に、救護・物資配給・広報など様々な機能を有したものが多く、被災者救援の拠点としての役割を担っていたが、避難者の減少や周辺地域の復旧、施設の本来機能の再開にともない、就寝、便所、洗濯など住居的な機能に収束していった。一方、地域福祉センターなど小規模な避難所では、避難生活のための諸機能を他の施設との連携などにより確保していた。 (4)避難者の立場における避難所での問題は多様であった。その問題の多くは、(1)ライフラインや交通網の寸断などの地震被害、(2)避難所に転用された施設やオープンスペースの居住空間としての不完全さ、(3)集団生活、(4)本来機能の再開、にともなうものであると考えられる。 (5)避難所となった施設の種類は多様であり、その敷地や建築・設備の環境、また機能がそれぞれ異なるため、施設ごとに避難所生活を送るうえでの利点と欠点もそれぞれ異なっている。 以上のことを踏まえ、非常時における地域施設の避難所としての長期利用を考慮した空間構成を提案していくことが今後の課題となる。
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