椅子に長時間座っている人間の姿勢変化は、座面の角度や高さ、背もたれの角度や長さ、クッション材などによって異なると予想される。本研究では、そのうち椅子の座面角度と座面高にしぼって、これらの条件がによって長時間着座時の姿勢変化がどのように異なるのかという点について実験的に明らかにすることを目的として行った。実験では、座面角度の異なる2種類の椅子(前傾4度、後傾4度)と座面高の異なる2種類の椅子(座面高46cm、座面高40cm)にそれぞれ10名の被験者を座らせ、約2時間の映画ビデオをみせた。その間の着座場面を2台のビデオカメラにより撮影し、撮影された着座姿勢を16種類のコードに置き換えて、10秒ごとのタイムサンプリングにより定量化した。 実験の結果、座面が後傾した椅子では、前傾した椅子にはみられない「上体が前傾した姿勢」が高い頻度で生起すること、姿勢の種類も多く多様な姿勢遷移が生起することなどが明らかになった。また、座面が前傾した椅子では、尻が座面の「前方」に固定された姿勢遷移が多いことなどが明らかになった。一方、座面の高い椅子では、尻が座面前方にある姿勢が高い頻度で見られることが明らかになった。今回の4種類の椅子はいずれも適正な座面角度・高さでない座りにくい椅子を実験対象としたが、いずれの条件でも、脚が「垂下」から「投げ足」に交互に遷移する頻度が高く見られた。すなわち、座面の高さや角度が適正でないと脚の姿勢遷移が多くなることが確認された。
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