本研究では、MBE(Molecular Beam Epitaxy)でRHEED(Reflection High Energy Electron Diffraction)やSTM(Scaning Tunnelling Microscope)によるその場観察を行いながら、一次元金属人工格子の試作を行い、基板や成長条件と実際の成長様式、得られた膜の微細構造の関係について調べた。また、弾性的性質についても明らかにした。 一次元人工格子の作製は、岩手大学工学部に平成7年に導入されたMBEを用いて行った。本装置は、多元の分子線ソースとRHEEDを有し、高純度で精密に微細構造が制御された人工格子の作製が可能であるとともに、超高真空下で測定が可能なSTM/AFM(Atomic Force Microscope)の装着さている。 一次元金属人工格子での作製には、従来の二次元金属人工格子の作製方法とは異なる手法が必要となるが、本研究では次に三種類の手法を、単独に、または組み合わせて用いた。 (1)低指数面からわずかにずらしてカットした(Off Angle)基板の利用 (2)膜厚が次第に変化する傾斜バッファ層の利用 (3)高角に配置した分子線ソースの利用 基板にはAl_2O_3、MgO、GaAs等を、傾斜バッファ層としては、Monolayer成長が比較的な容易なAu、Cuを用いた。 バッファ層の上にNi、Agの一次元人工格子の作成を試みた。RHEEDのその場観察によって面内に異方性が生じていることが明らかとなった。また、できた膜の弾性率にも面内で異方性が確認された。これはMEAM法で計算した結果ともよい一致を示した。
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