静水圧を発生できるピストンシリンダー方式の高圧セルを自作して、高圧(〜2GPa)・低温(約4〜300K)域での電気抵抗変化を精度よく測定できる装置を組み上げた。この装置を用いて、Al_<25>Ce_<75>及びAl_<80>Ce_<20>合金の急冷凝固試料(アモルファス試料)について低温域での電気抵抗変化の圧力依存性を測定した。また、申請者らが開発したダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧蛍光XANES測定法に更なる改良を施し、種々の高圧下におけるアモルファス試料中でのCe価数の圧力依存性を実測した。得られた結果を以下に示す。 1.Al_<25>Ce_<75>合金における常圧下でのCe価数は、結晶試料では3.01価、アモルファス試料では3.03価であり、アモルファス化による価数の増加は非常に小さい。また、Al-Ce合金中のCe価数は合金組成にほとんど影響を受けない。 2.Al_<25>Ce_<75>合金のCe価数は加圧に伴い、結晶試料では3.01→3.06価(4.8GPa)、アモルファス試料では3.03→3.09価(1.5GPa)へと増加する。すなわち、アモルファス試料の方が遙かに低圧側で混合価数状態へと移行する。 3.アモルファス試料の電気抵抗は、常圧下では僅かに上に凸の温度変化を示し弱い高密度近藤効果が現れているが、加圧に伴って電気抵抗の温度係数が大きくなり、約1.2GPaより高圧側ではフォノンによる伝導電子の散乱が支配的になる。 以上のように、アモルファスAl-Ce合金における高密度近藤状態の圧力依存性は結晶に比べて桁違いに大きく、僅かに〜1GPa程度加圧しただけで、高密度近藤系から価数揺動系へと転移することが明らかとなった。
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