研究概要 |
希土類イオンを含有する混合アニオンハロゲン化物ガラスは、発光材料として有用であることが期待されているばかりでなく、複数の陰イオンを含有することからその物性について学術的にも大きな興味が寄せられている。本研究では、CdX_2系(X=F,Cl)、ZnX_2系(X=F,Cl)、及びAgX系(X=Br,I)の3種の組成系について、希土類イオンを含有する混合アニオンガラスを作製し、その光物性を測定した。特にCdX_2系、ZnX_2系、については、Cl/(F+Cl)が0〜0.7の広い範囲でガラスを得ることができた。エルビウムを添加したガラスについて組成によって変化する輻射遷移である電気双極子遷移のパラメーターとしてJudd-Ofelt(J-O)パラメーターを求めたところ、CdX_2系ではCl/(F+Cl)=0.1〜0.3の範囲でΩ_2/Ω_4が単調に増大したのに対し、ZnX_2系ではCl/(F+Cl)=0〜0.1の範囲で減少することがわかった。また、テルビウムを含有する塩化物系ガラスに於いてフッ化物ガラスでは観測されない蛍光が観測され、塩化物系のガラスが低フォノン発光材料として大きなポテンシャルを持つことがわかった。塩化物系よりもさらに低フォノンであることが期待されるAgBr-CsI-PbBr_2系のガラスでは、ネオジウム添加した場合にやはりフッ化物ガラスでは観測不可能な準位からの蛍光が観測された。これらの準位は、下準位との間隔が約1000cm_<-1>程度であり、代表的なフッ化物ガラスであるZBLANガラスでは、全く蛍光を発しないのに対し、AgBr系では、極めて強い発光が観測され、この系のガラスが、希土類イオンのホストとして、高い発光効率のみならず、新たな発光線を得るための材料としてのポテンシャルを持っていることが示された。
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