研究概要 |
新しい耐熱材料として遮熱型傾斜機能材料(Functionally Gradient Materials : FGM)の研究,開発が活発に行われている.FGMの信頼性の向上等のためには,FGMの熱損傷を解明する必要があるが,組成が複雑に変化しているため,詳細な損傷メカニズムの解明はなされていない.そこで本研究では,FGMの熱損傷メカニズムを解明するための第1ステップとして遮熱コーティング(Thermal barrier coatings : TBCs)の熱損傷を検討した. 試験片としてNi基超合金上にNiCoCrAlY合金とZrO_2-8%Y_2O_3(YSZ)を大気圧プラズマ溶射した.試験片を赤外線加熱炉を用いて熱負荷を与えた.本研究では特に冷却条件を様々に変化させ,所定のサイクル数毎に表面の組織観察およびX線残留応力測定を行った.さらに皮膜単体の熱分析も行い,これらのデータをもとに有限要素法による非定常熱応力解析を行い,TBCの熱損傷を理論的にも検討し,以下の結果を得た. 溶射された状態のTBC内には引張残留応力が発生しており,後熱処理や繰返し熱負荷を与えることにより残留応力は減少する.これは溶射過程で皮膜中に生じたネットワーク状の微視き裂が開口して縦割れが進行し,残留応力を解放するためである.ただし加熱後に皮膜側から急冷する熱サイクルを与えた場合,YSZ中に層間はく離が生じ,皮膜表面の残留応力は急激に増加する.この現象は応力解析の結果より,加熱時に皮膜に生じる非弾性ひずみが冷却過程で圧縮応力を引き起こし,皮膜中で座屈現象を生じ,層間はく離を引き起こしたためでる.これらの結果より,熱負荷条件によりTBCの損傷形態は大きく異なるが,X線的残留応力も変化し,損傷評価法の一つとしてX線回折法の適用可能性を示している.
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