軽量耐熱材料として、それ自体、また構成相としての役割が期待されるTi_3Al(α_2)相について、単結晶を用いてその疲労変形挙動を明らかにした。その結果、結晶方位に依存して、この結晶の主すべり系である{101^^-0}<12^^-10>柱面すべり系が広い領域にて活動するとともに、その疲労挙動は活動すべり系の数に強く依存した。とりわけ、疲労硬化は2つの柱面すべり系が同時に活動する場合に顕著であり、結晶には特徴的な内部組織が形成された。この組織は[0001]方向に高密度に集積した転位の束、ならびにその間を運動するらせん転位、さらには短い刃状双極子から成り、我々はこの組織のことをSaturated Bundle Structure(SBS)と名付けた。このSBSの束部分の太さ、束間隔は飽和時の塑性歪み振幅で整理され、一定の定量関係が見出された。さらに、焼鈍実験により、束の形成はらせん転位同士の切り合いによるスーパージョグに起因するものであることを明らかにした。ただし、SBSの形成、発達は室温から500℃までの疲労挙動を支配するものの、600℃付近では転位双極子ならびにループの動的回復によりSBSはもはや形成されず、寿命の改善、ならびに硬化度の低下が認められた。さらに800℃付近では、この結晶は再び硬化し始めるとともに、内部には安定なノッドを含む転位のネットワークが形成され、低温側と同様、変形の不均一化を助長した。その結果、結晶表面には初期より切り欠き状のステップが形成され、疲労寿命の低下へと繋がった。以上のように、Ti_3Al単結晶の疲労挙動は、低温ではSBS、高温ではネットワークの集積といった内部微細組織の変化と強い相関関係を示した。
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