本年度は、疎水性材料を溶射皮膜に塗布した各種塗膜を対象に処理方法と水滴の接触角との関係について検討を行った。供試体はアルミニウム基板(寸法:150×75×2mm)に溶線式ガス溶射法で99.9%Al、95%Zn-5%Al皮膜を厚さ約300μmに被覆し超音波洗浄後、疎水性のフッ素系、シリコン系及びフェノール系の樹脂剤とフッ化ピッチ粉末を重量比1:1〜5:5で混合し、塗布したものである。接触角の測定は、接触角計(協和界面化学、CA-D型)を用いて行い、体積約1.8mm^3の蒸留水で形成される水滴を対象とした。 1.表面粗さと接触角の関係 アルミニウム基板の表面粗さをエメリ-ペ-パ-とブラストによって粗面化し、算術平均粗さRa=16.2μmまでの範囲における表面粗さと接触角の関係を明らかにした。接触角は表面粗さが粗いほど大きく、溶射皮膜の適度な粗さは(Ra=12〜18μm)接触角を向上させることが示された。 2.表面処理方法と接触角の関係 無処理のアルミニウム基板の接触角は45°程度であるが、溶射皮膜の被覆によってAlで約85°、Zn-Alで約75°、皮膜に疎水剤を塗布したものではいずれの場合にも120°以上となった。特に、シリコン系樹脂にフッ化ピッチを混入したものでは150°前後と高い値を示した。 3.促進暴露試験と接触角の関係 樹脂材料は一般に耐候性に劣るものが多い。そこで各供試体について紫外線蛍光灯式耐候性試験機(スガ試験機、DPWL-5R型)による促進暴露試験を実施した。暴露試験の条件はJIS D0205に準拠して行った。アルミニウム基板のみの場合は暴露時間の影響をほとんど受けないが、溶射皮膜及び樹脂剤を塗布したものでは時間経過に伴う変化が大きく、接触角は30〜60°まで低下した。しかし、フッ化ピッチを混合した塗膜では比較的変化が小さく、1000時間経過時点においても接触角は120°前後を維持した。
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