本研究では、開発中の高温衝撃圧縮装置に改良を加え、従来より高温かつ高圧力の負荷にも耐えうる新しいシステムを設計・製作した。この装置では、爆発時に高温加熱部の周囲に加熱されていない鋼製の補強部材を遠隔操作で発破直前にセットすることで、粉末容器を破壊することなく850℃までの実験が可能になった。従来、このような高温での回収実験は極めて困難であり、おおむね700℃までの実験までしか行われていなかったのに対して、本研究では新しいいくつかの実験結果を得ることができた。 実験はまず、粒径の異なる高速度鋼粉末を用いて、成形体組織に及ぼす温度の効果を調べた。温度上昇に伴って一般に粒子表面に生じる溶融の割合は増加の傾向を示したが、800℃の実験でその比率は低下した。この温度での実験では粉末素材に再結晶が生じることが考えられるので、軟化の影響で粉末に加工硬化能が付与され、粒子の変形域が広がり、表面溶融を生じにくくしたと結論づけられた。また粒子径が大きいほど、大きな溶融割合が生じた。この他にも、高温加熱の効果によって、熱残留応力の原因に起因して発生するクラックを減少させることが可能であることなど、実験諸因子の効果が明らかにされた。 c-BN、c-BN/TiB_2複合粉末についても高温衝撃成形実験を行い、850℃までの回収実験を実施した。これらの粉末の場合、常温では数GPaの硬度値しか得られない材料についても、高温実験によって30〜40GPa以上の高い硬度値を示す良好な形成体が得られ、高温加熱の効果が明確に示された。
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