研究概要 |
金属スズをターゲットとし,窒素をスパッタガスとした反応性高周波スパッタリング法を用いて,窒化スズ薄膜の作製を行い,その結晶構造を評価するとともに,構造が膜の諸特性に与える影響について考察を行った. 窒化スズ薄膜の成膜には,平行平板型の高周波マグネトロンスパッタリング装置を用いた.結晶構造解析には薄膜X線回析装置を用い,室温におけるvan der Pauw法によって電気的特性の評価を行った.また,X線光電子分光分析により,膜の組成と化学結合状態分析を行った. 高周波出力50〜175W,成膜圧力0.27〜1.3Paの範囲内では,すべての条件で六万晶系の結晶構造を持つ結晶性窒化スズを成膜できた.X線回析実験の結果から,成膜中の圧力が低いほど,すなわち平均自由行程が長いほど,また高周波出力が大きいほど、回析ピークの半値幅は狭くなり,膜の周期的構造の乱れが少なくなることがわかった.どの試料においても,XPSによる組成分析の結果,Sn/N原子数比は約1.0であり,Sn3d5/2,N1s各光電子ピークの化学シフト量は,それぞれ+1.6eV,-1.9eVであった.一方,膜のキャリア密度は平均自由行程15mm,高周波出力125Wで極小を示した.基板表面での拡散距離,膜に損傷を与えるイオン衝撃,また未窒化スズの含有量などが影響していると考えられる.これらを制御することにより,さらに良質な結晶性を有する窒化スズ薄膜の作製が可能になる.
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