材料プロセスの設計においては、運動量、熱、溶質の移動現象が重要となる。材料電磁プロセシングの分野では、さらに電場、磁場というプロセス変数を加えることで従来の問題点を解決し、あるいは全く新しいプロセスの可能性を見いだす研究分野である。また、従来の凝固工学の分野においても、凝固組織に及ぼす操作因子として電場、磁場の効果は非常に興味のある研究対象となっている。本研究では工具材料、軸受け材料として利用される偏晶合金に着目した。偏晶の組織は2相に分離した液相が凝固し、マトリックスに均一微細粒が分散したもので、強電場印加の分散粒子に及ぼす電場の影響を調べた。実験には厚さ1mm程度の非常に薄いBi-Ga合金を試料とし7000ボルトまでの電圧を与えることのできる一方向凝固装置を用いた。Ga粒子の形状は凝固速度が増加するとともにそのサイズが減少し、従来の報告と一致した。電場を印加することで、粒子のサイズは肥大する傾向を示した。特に、凝固速度の速い場合には著しく効果が現れた。電場を印加することにより、固液界面に生成するGa滴の濡れ生が向上し、合体が促進され粒子のサイズが大きくなると考えられる。実際、電場を印加することによりGa粒子の存在率が大幅に増加しており、界面の乱れにより固相側に取り込まれてゆく量が多くなっている。この界面の乱れは凝固速度に依存しており、速くなるとより不安定、すなわち、乱れの波長は小さくなる。この界面の乱れのサイズに依存して粒子の大きさが決定されるが、凝固速度が大きくなり、乱れの波長がある値以下になった場合には、電場による界面張力の増加により粒子の取り込みに合体が優先し、異常な肥大化を引き起こすと考えられる。この一連の研究により、電場が界面の濡れ性、界面張力に影響を与えることが示され、凝固組織の電場による制御の可能性が示された。
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