次世代電子デバイス用基板材料として重要視されている多元系化合物半導体バルク単結晶の高性能、高品質化に関する基礎的研究として、単結晶作製時の流動、熱・物質移動現象に関する研究を行った。In-GaSb-Sbからなる試料を均熱炉内で溶融、凝固させ、作製したInGaSb混晶内の濃度分布をEPMAで測定した。この結果を以前研究者が微小重力環境下で作製した試料内濃度分布と比較検討することにより以下の知見を得た。 重力の影響;微小重力内で作製した試料における濃度分布は試料全域にわたりほぼ均一であったのに対し、本研究で作製した試料中の濃度分布は不均一であり、密度の小さなSbが試料上方に残留した。即ち地上においては自然対流が存在するものの、融液の混合が不完全であり、重力偏析の影響が残存する。 マランゴニ対流の影響;宇宙で作製した試料において、自由界面が存在する試料と、存在しない試料では濃度分布が大きく異なり、自由界面が存在しない試料は融液の混合が拡散によってのみ行なわれるため、初期試料配置位置を反映した濃度分布を呈した。一方、自由界面が存在した試料は、拡散に加え、濃度差に起因するマランゴニ対流によっても融液混合が行なわれるため、混合が促進されていた。以上のことより濃度差マランゴニ対流による融液攪拌力は極めて強く、地上における自然対流と同等かそれ以上と推定できる。 拡散係数算出;宇宙で作製した試料内の濃度分布より、GaSb融液内へのInの拡散係数は2.4×10^<-4>cm^2/sと算出された。
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